イシガメは悩ましい

愛亀ときどきアクアリウム

足を喰い千切られた野生個体

準絶滅危惧 (NT)

カメを飼っている、若しくはカメに興味のある者からすれば、ニホンイシガメ(以下イシガメ)は言わずと知れた環境省レッドリストの準絶滅危惧種。正確には準絶滅危惧(NT)というらしい。レッドリストのランクとしては、完全な「絶滅」を一番上として「準絶滅危惧(NT)」は上から7番目の下から3番目に位置する。

どの程度の状況かというと、

現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

という感じだそうだ。

これは僕が想像していたよりも意外にもまだ大丈夫という印象を受ける。

実感するのは難しい

昔は身近な自然にイシガメが普通に生息していたという話をネット上でもよく見かける。野生のカメと言えばイシガメだったらしい。

たぶん僕が小学生くらいの頃もそうだったのだろうとは思うが、家の近所にはカメが好む河川があるような環境ではなかったからか、昆虫やザリガニ等は毎日のように捕まえて遊んでいたのだけれど、カメ自体を発見することが殆どなかったので僕にとってはカメはどちらかと言えば珍しい生き物だという思いがあった。

そういうことから僕には「昔に比べてイシガメが減ってしまった」ということを実感することはできない。

例えばイシガメが減ってしまった要因として護岸工事等の開発や外来種のアカミミガメ(通称ミドリガメ)の大繁殖によるイシガメの生息場所の減少ということが言われているが、元々そこにイシガメが生息していたことを知らないので、やっぱり今ひとつピンと来ない。

他の問題も含めてどれも調査した結果のデータから基づいているのだから、確かなことなのだろうとは思ってはいる。

環境省の「現時点での絶滅危険度は小さい」という説明文に加え、実際に地元で野生のイシガメのベビーを偶然に捕まえて飼育した(脱走されてしまったが)こともある僕には、それほど危機意識を高く持つというのは難しい。

但し、あの特定外来生物の実態を知るまでは。

特定外来生物アライグマ

僕の世代だとアライグマと聞いて先ず頭に浮かぶのはTVアニメの『あらいぐまラスカル』と言い切ってもいいだろう。どのへんの世代までが共感できるのかは知らないが、子どもの頃にラスカルを観ていなければアライグマの存在すら知らなかったかもしれない。

そんな有名なラスカルに乗っかった業者がペットとしてのアライグマを大量に日本に持ち込んだが、本来の気性の荒さ等で飼いきれなくなった飼い主が云々、あとは大体いつものパターンで野生化したアライグマ。雑食で何でも食べて、繁殖力が強く天敵もいないので日本で繁殖したい放題のようだ。

イシガメは捕食対象

雑食性で何でも食べるアライグマはイシガメも捕食する。当然クサガメやアカミミガメも捕食対象なのだろうけれど、イシガメが生息する河川の中流域や上流域にアライグマも生息しているからなのかわからないが、イシガメが捕食されることが多く、一気に大量のイシガメがアライグマに捕食されたと思われる形跡が発見されたこともあるらしい。

下のリンクはネット上に公開されている『日本固有種ニホンイシガメの危機』というpdfファイルだが、これにアライグマによる捕食被害にあった野生のイシガメの写真が掲載されている。死骸ならともかく、この姿で生きているというのが辛い。

※生々しい写真が苦手な人は閲覧注意

http://isgs.kyushu-u.ac.jp/ISGSseminar/file/11-1suzuki.pdf

僕はいくつもの動画で四肢のどれかを欠損した野生のイシガメを見たことがあるけれど、野生のイシガメの四肢欠損率が高過ぎて驚いた。

下の2つの動画は川の中にカメラを仕掛けて撮影していたところに偶然イシガメが登場して撮影された動画。偶然に撮影された野生のイシガメ3匹のうち、2匹の前足が欠損しているという事実。

※イシガメのところから動画がスタートするようにしてあります。

よしおちゃんねる - YouTube

 

 

ただただ「イシガメがかわいそう」だと思うことしか出来ない

護岸工事やアカミミガメ(他にもクサガメとの交雑や人間による乱獲等と上げればたくさんあるけれど)の問題と何が違うのかと言えば、実際のところの深刻さとしては僕にはわからない。

ただ、このアライグマによる捕食被害状況は実際に調査に参加したりして体験しなくとも、ネット上の情報や写真や動画等を見るだけで充分にショッキングだ。野生のイシガメの危機を感じるには充分過ぎる。

だけれど、自分に何かが出来るということもなく、ただただ「イシガメがかわいそう」だと思うことしか出来ないという。